近年では, 宗教を強く忌避する傾向もあいまって, 葬儀等はできるだけ(将来の費用も含め)安価かつ宗教色を入れずにやりたいという志向が強まっています.
そのなかでたびたび問題になっている詐欺があります.
「遺骨をダイヤモンドにできる」
というものです.
正直にいえば, この種の詐欺は, 極めて稚拙なものです.
しかしながら, 親族の逝去によるショックから正常な判断が難しくなった時期に, そのような魅力的な提案を受ければ, 騙されてしまうのも仕方のないことなのかもしれません.
極めて悪質な詐欺だとは思います.
*遺骨の成分は,「遺骨」というだけに, 主成分をリン酸カルシウムとする混合物です.
*人体を燃やそうというのですから, 火葬炉は酸化雰囲気であることが求められます.
*そのため, 炭素画分が残ることはほぼありませんので, そもそもダイヤモンド(ダイヤモンドは活性炭や鉛筆の主成分と同じく炭素からできています.)など作れるはずもありません.
*ただし, 異様に骨密度が高く, 骨髄まで十分な酸素が浸透しないような場合には, 若干の炭素画分が残留する可能性がありますが, ダイヤモンドの合成における収率が, 高純度グラファイトを原料としても最高で10%程度といわれているなか, (極めて多種の分離コストが高い不純物を含む混合物である)遺灰や遺骨から炭素を抽出し, 数百ミリグラムのダイヤモンドを得ようと考えたとき, どれほどのコストがかかるでしょうか.
*数百万円では到底足りません. 真面目にやれば, 数千万円の費用を要するでしょう.
*そのため, これらの詐欺は, 工業用に合成された合成ダイヤモンドをあたかも「遺骨から作った」などと詐称したり, 悪質な業者はキュービックジルコニアを「ダイヤモンド」と偽っているわけです.
*消費者としては, 送られてきた「ダイヤモンド」が偽物であるなどと考えたくはないはずです. もし偽物であったならば, 自分が提供した親族の遺骨はどこへ行ったのだ...ということになるでしょう.
*そのため, この種の詐欺がなくなることはないでしょう. 知らなければよいということもあるかもしれませんね.
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